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点群・ポリゴン処理

解析メッシュを実物にフィット

アルモニコスでは自動車プレス業界に対してさまざまな開発支援をしています。
金型玉成に関してはリバースエンジニアリングソフト「spScan」を、試作品の検査においては自動検査ソフト「spGauge」を使用いただいています。
ほぼすべてのお客様が試作回数ゼロを目指して、プレス成形シミュレーションソフト(以下CAEと呼ぶ)を駆使しています。
昨今のCAE解析技術向上は、初期のプレスパネルの成形性評価(ワレ、しわ)に大きく貢献できていますが、変形状態の解析結果と実際にプレスされた製品パネル形状にはまだ差異があり、そこが課題となっています。
差異の大きな要因の一つは、”バーチャルとリアルの差” が発生していることにあります。
CAEは設計段階のプレス金型CAD形状で解析されているのに対し、実際のプレス金型は現場で担当者が手修正で見込み改良をしているため、解析時の金型形状と異なるからです。

現在、アルモニコスではバーチャルとリアルの差を埋めるために解析メッシュを実物にフィットさせる技術を研究開発中です。
ここで言う実物とは、3Dスキャナーで計測したポリゴンメッシュを指します。解析メッシュはCADデータからメッシングするためきれいな三角形が並んでいますが、計測したポリゴンメッシュは粗密があったり、ノイズがあったり、かくれているところが計測できなかったり、完全なデータではない状況がほとんどです。このような状況下において、きれいな解析メッシュ全体を実物にフィットさせることは非常に難しい課題です。
今回のラボの取り組みでは、研究途中の状況をご報告いたします。

現状課題

下図は解析メッシュと実物との誤差を表示しています。
最大誤差が-1.65㎜あることがわかります。
このデータを使用してCAEで解析しても精度のいい結果が得られないことは明白です。
まずこの差を極力ゼロにしてからCAEの最適パラメータを探すなどのCAE側の精度向上をすべきだと考えています。

プログラミング上の課題

上図の場合、データの欠落が三箇所(①、②、③)あります。移動対象であるCAEメッシュにとって移動先が不明となるため周辺の移動ベクトル等を参考に移動させることになります。
欠落した部位には極端な特異形状は無いという前提条件に立ち、周辺に対して自然な形の移動を実現します。

今回のテストデータにて、実物形状データの欠落の穴部に影響されて変形が大きくなると思われるフィレット形状部について、変形前の解析メッシュと変形後の解析メッシュの曲率カラーマップで検証した結果を以下に示します。
このデータでは、変形前後で特異なメッシュ変形がないことが確認できました。

実行動画

結果

BeforeAfter
平均誤差:-0.22㎜平均誤差:-0.03㎜
標準偏差値:0.31標準偏差値:0.18

上図でわかるように、誤差が縮まり、全体的なギャップのばらつきも減少しました。良好な結果と判断しています。

ただし、現在の研究段階では、計算基準点を手動で指示しています。動画の途中に赤い色で表示された点がその計算基準点になります。今後のプログラム拡張計画としてはその計算基準点を自動配置することです。

まとめ

課題と将来像を以下の図で示します。

研究担当

解析メッシュを実物にフィット

取締役 CTO 兼 ACE事業部 事業部長 高柳和典

1996年、(株)アルモニコスに入社し、光学シミュレーションや曲線、曲面の形状処理関連の仕事に携わる。spGate, spScan の立ち上げを担当。

2012年、技術統括執行役員に就任。

​2019年、​​​取締役に就任。

趣味は電子工作。

解析メッシュを実物にフィット

AXION事業部 遠藤純子

2021年4月にコロナ禍の在宅勤務普及に乗じてアルモニコスに復職。spGauge開発と受託開発を担当。

家では双子の娘達と日々奮闘中。写真は23年5月の連休に家族旅行で奈良へ行き東大寺二月堂にて撮影。趣味は仕事、音楽鑑賞、楽器演奏、読書(特に漫画)、旅行、散歩。子供とアンサンブルをするのが好きだが、徐々に嫌がられつつある。最近は漫画サイトでの課金が止まらないのが悩み。

解析メッシュを実物にフィット

AXION事業部 営業部長 山根 雅則

元国鉄職員という異色の経歴。国鉄退社後、自動車プレスの業界でプレス成形の業務に従事。アルモニコスの製品検査ソフト「spGauge」のヘビーユーザーかつ、リバースソフト「spScan」のファーストユーザーでもあり、新バージョンの仕様提案をしてきた。ソフトウェアのユーザーから作り手になりたいと、アルモニコスに2014年入社。

入社して以来、spScanの営業担当マネージャーとして、仕様決めから営業、販売、講演まで幅広く担当。

解析メッシュを実物にフィット

代表取締役社長 森川滋己

1988年、(株)アルモニコス入社。

入社以来、「点群、ポリゴン、自由曲線、自由曲面」を扱う形状処理技術に従事。特許出願、多数。アルモニコス製パッケージソフトspGate、spGauge、spScan、ClassNK-PEERLESSの企画および立ち上げを牽引。

1999年、取締役に就任。2014年、代表取締役社長に就任。

趣味は、読書、釣り、ゴルフ、サーフィン。

解析メッシュを実物にフィット

お正月に弊社のRDセンター玄関にお目見えする門松は、森川と山根の手作りです。

毎年年末に、竹の伐採から竹磨き、飾り付け、据付まですべての作業をおこないます。

年々手際もよくなり、ほとんど職人レベルの仕上がりになってきました。

解析メッシュを実物にフィット

※所属・肩書は記事掲載時のものであり、現在とは異なる場合があります。