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FARO Focus と FARO Orbisを点群モデリングで比較してみた

FARO社の地上型3Dレーザースキャナー『Focus』とモバイルスキャナー『Orbis Premium』を使って、同じ場所をそれぞれスキャンして点群取得し、モデリングを行いました。
その結果を参考に、点群モデリングソフト開発会社の視点で、それぞれのスキャナーを比較しました。本記事をお読みいただいているお客様の業務には、どちらのスキャナーが適しているのかを判断する一助となれば幸いです。
※2025年4月に開催したWebinarの内容を基に記事化しております。
スキャナー自体のスペックについて
FARO Focusと Orbis Premiumの各スペックについて簡単にご紹介します。
Focusは、コンパクト設計でありながら測定精度は1σ表記でクラス最高水準(2mm@10m / 3.5mm@25m)を満たし、プロ・アマ問わず、現場条件に合わせた最適化した測定が可能となっております。点群データの解像度・品質を用途に応じて現場で制御できる点や、取得データが軽量で後工程での処理が楽な点が好評なスキャナーです。

Orbis Premiumは、歩行経路や操作に左右されにくく、SLAMで起きがちなデータ破綻が極めて少ないため、SLAMの弱点を克服した万能機との呼び声も高いスキャナーです。精度は、歩行スキャンで (1σ表記) 5mm、Flashスキャンで (1σ表記) 2mmとなっており、高精度点群も取得可能です。歩行ルートを端末で可視化でき、SLAMで起きがちな「撮ったつもり」を防止できる点も選ばれるポイントとなっています。
※精度について、Focusは3次元位置精度を示します。一方 Orbis Premium はレンジノイズを示します。

一番大きな違いとしては、Focusは測定点を設けてスキャナー本体は据え置いた形で計測を行い、Orbis Premiumはスキャナーを持って移動しながら計測を行うという点です。
価格は、FocusのほうがOrbis Premiumよりも高額となっておりますが、Focusは照射距離に応じて3モデルから選択可能です。
詳しくは、スキャナー各製品ページをご覧ください。
・FARO Focus:https://www.faro.com/ja-JP/Products/Hardware/Focus-Laser-Scanners
・FARO Orbis Premium:https://www.faro.com/ja-JP/Products/Hardware/FARO-Orbis-Mobile-Laser-Scanner
見た目を比べる
スキャナーのスペックの違いを踏まえた上で、それぞれで取得した点群の違いを比較します。
まずは、見た目の違いについて確認します。
今回は会議室を測定した点群を使用しました。
Focusで測定した点群
Orbis Premiumで測定した点群
やはり、見た目は地上型レーザースキャナーのFocusの方が圧倒的にきれいです。
点群の状態では、視認性の良さは一目瞭然です。
点群モデリングの際、視認性はモデリング精度・速度に大きく影響します。
この比較から、以下のことがわかりました。
- Focusの点群は鮮明に測定できている。精度も高く、ノイズが少ない。
- Focusは物体の死角の測定ができない。
- Orbis Premiumは全体がぼんやりと測定されている。ノイズも発生している。
- Orbis Premiumは、移動しているときに裏側も測定できている。
固定して測定している強み(Focus)と、移動しながら測定できる強み(Orbis Premium)の特徴がそれぞれ出ています。
モデリングしてみる
前章の点群を使い、床・壁・天井を平面形状でモデル化します。
Focusで測定した点群をモデル化
Orbis Premiumで測定した点群をモデル化
Focusで測定した点群をモデル化した結果
Orbis Premiumで測定した点群をモデル化した結果
視認性では差がありましたが、モデル化するとほとんど同じように見えます。Orbis Premiumの点群の粗さは、平面のモデル化には影響はありませんでした。
次に、細かい形状をモデル化して比較していきます。
橋の手すり・配管のモデル化(Focusの点群)
橋の手すり・配管のモデル化(Orbis Premiumの点群)
どちらの点群も、手すり・配管部分をしっかりと円柱形状として認識し、自動作成が可能でした。
手すりの支柱部分のモデル化(Focusの点群)
支柱の形状がしっかりと捉えられ、PEERLESSの面材作成機能で忠実に表現可能でした。
<操作の風景>
手すりの支柱部分のモデル化(Orbis Premiumの点群)
Focusと同じ支柱は点群があまり取得出来ておらず、こちらの点群が多い場所を使用して作成しました。
モデリングのしづらさがありました。
<操作の風景>
モデリング結果を見ると、点群の見た目の差ほど、スキャナーによる違いは出ませんでした。
ただ、今回は見通しの良い箇所でシンプルな形状のモデリングを行いましたが、配管やその他部材がごちゃごちゃと入り組んだ場所では違いが出る可能性もあります。
精度は?
点群の見た目では明らかにFocusに軍配があがりましたが、モデル化結果ではほとんど同等の完成度と言ってもよいかと思います。では、作成されたモデルから寸法計測して、その結果を比較してみます。
測定個所は、以下の場所で、使用する平面は点群から作成した面のみとしました。
(点群のない場所に、オペレーターの想定で作成した面は使用しません。)


FocusとOrbis Premiumのスペックの差、および点群の精度・ノイズの違いからみても、モデル化することによりどちらも良い精度で計測ができていることがわかります。
また、あまり大きな差もありませんでした。
今回は平面を使った精度検証をしましたが、配管などのその他形状の精度検証もデータがあれば可能です。
配管などの場合は、平面以上に使用した測定機による差は大きくなることが想定されます。これは配管径が小さいことから、正確な配管径が再現できないことに起因するものです。
これらの結果を踏まえ、必要となる精度・粒度をしっかりと把握して利用する場合、どちらの測定機でも活用できることがわかります。何を目的とするか、測定機の特徴はどこか、などを理解・検討していただくことで、使用する測定機が見つかります。
まとめ
ここまで検証を行い、FocusとOrbis Premiumのそれぞれの利点を以下のようにまとめました。皆さまがこれからスキャナーの機種を選定される際は、測定現場の特徴や、測定対象、後工程(干渉チェックや図面化など)で必要な精度などを複合的に考慮して決めていただくと、後悔のない選定ができると思います。また、価格面や使いやすさで選定する場合も、それぞれのスキャナーの強みと弱点を理解しておくことで、測定時にきちんと対策を取ることが可能になります。
FARO Focusの利点
- ノイズが少なく、点群データが見やすい →点群初心者向き
- 10m先で2mmという高精度な点群計測が可能 →小径管やボルトの形状など詳細部まで計測が必要な業務向き
FARO Orbis Premiumの利点
- 測定速度が速い →人の多い場所や長時間滞在できない場所での測定向き
- 死角が少ない →ごちゃごちゃとした場所でも測り忘れを防止できる
- Flashスキャンで固定スキャンも可能 →ある程度の精度を追求できる。

補足:FARO Orbis Premium のFlashスキャン
Orbis Premiumでは、スキャナーを持って移動しながらの計測を行いますが、静止して計測を行うFlash スキャンも可能となっております。
Flashスキャンでは、15 秒間静止し、1,900万点のカラー点群(精度2mm)を取得できます。移動しながら取得する計測データと、静止して取得する高解像度・高精度の計測データを、FARO独自のFlash Technologyによるアルゴリズムにて後処理でデータを融合します。Orbis Premiumは本機能が搭載された初めてのSLAMモバイルマッピングデバイスです。
スキャン結果比較画像 左:モバイルスキャン(移動しながらの計測)、右:Flashスキャン
左に比べて、右のFlash スキャンで計測した点群のほうがモノの輪郭がハッキリとしていることがわかります。
必要に応じて、モバイルスキャンとFlash スキャンを切り替えて運用することがお勧めです。
補足の補足
実はFlash Technologyは、Focusにも搭載されています。ただ、その使われ方と役割は異なります。 Focusの Flashスキャンでは、低解像度スキャンで点群を取得した後、本体上部に搭載した RICOH Theta Z1の360°カメラで画像を取得します。1器械点あたり約28秒という短時間で、実用十分な精度と点群密度を確保することが可能です。こちらのFlash TechnologyはFARO独自のスマート*アップスケーリングアルゴリズムにより点群を生成するハイブリッド・リアリティ・キャプチャ技術(=レーザースキャンと画像情報を融合した点群生成技術)です。このハイブリッド・リアリティ・キャプチャはFARO社の特許申請済となります。
*アップスケーリング
取得したデータそのものを単純に増やす(補間する)のではなく、複数の情報を組み合わせることで、より高密度・高解像度のデータとして再構成する技術。FocusのFlash Technology におけるアップスケーリングでは、高速に取得した低解像度のレーザースキャンデータに、360°パノラマ画像から得られる色情報や形状情報を組み合わせ、FARO独自のアルゴリズムによって点群を生成している。
FAROのFlash Technology は「点群取得時間を大幅に短縮しながら、実用十分な精度と密度を確保する」というアプローチを取っています。Focus と Orbis Premium、どちらの Flash スキャンも、現場状況に応じて通常スキャンと Flash スキャンを組み合わせた点群取得が可能となっております。その結果、現場作業の効率を高めつつ、後工程でのモデリングや解析に耐えうる点群データを短時間で取得することが可能となりました。
詳しくはFARO社の以下記事をご参照ください。
記事1: https://www.faro.com/en/Resource-Library/Article/A-New-Way-to-Capture-Large-Volume-Construction
記事2: https://www.faro.com/en/Resource-Library/Article/A-Look-Under-the-Digital-Hood
記事3: https://www.faro.com/en/Resource-Library/Article/FARO-Orbis-with-Integrated-Stationary-Scanning

