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XGRIDSのスキャナーで取得した点群でモデル化してみた

XGRIDSが提供するLixel Series はシンプルな操作で高精度なデータを取得できるハンディスキャナーとして注目を集めています。ただ、TLS (地上型レーザースキャナー)と比べた時にハンディスキャナーで取得した点群の密度や精度、モデリングの可否を懸念されるお客様もいらっしゃいます。本記事では点群モデリングソフト開発会社の視点で、XGRIDSの点群を実際にモデル化してみて、点群の扱いやすさ・モデリングのしやすさを確認した結果をお見せします。

スキャナー製品ページhttp://www.kobeseiko.co.jp/Lixell2pro.html
本記事作成にご協力いただきました株式会社神戸清光さまのページになります。

目次

対象点群と作成モデル

今回、モデリング検証を行う点群データはこちらです。スキャナー機種:Lixel L2 Pro (16/120)
スキャン時間:15分

この点群をClassNK-PEERLESSでモデル化した結果がこちらです。

細かい部分までモデル化できているかと思います。ここまでモデル化できるなら問題ないと考える方も多いのではないでしょうか。それでは、XGRIDSのスキャナーで取得した点群をどのようにモデリングしたのか、ハンディスキャナー点群の課題と一緒に確認していきましょう。

ハンディスキャナー点群の課題:点群が見づらい?

ハンディスキャナー点群の課題の一つ目として、TLSの点群に比べて見づらいという課題が挙げられます。これはレーザー測定精度がTLSより劣ることに加えて、移動しながら位置を推定するSLAMの誤差が影響しているためです。Lixel Seriesではこういった課題を減らすために、Visual SLAM とSLAMの両方が搭載されており、従来のLiDAR SLAMだけの点群よりも点群が二重になることがなく、特徴点をしっかり捉えた点群形成ができるようになっています。
※SLAM : Simultaneous Localization and Mapping, 移動体の自己位置推定と環境地図作成を同時に実行する技術の総称。

前章の点群データの画像も、特に見づらさを感じないかと思います。
それでは、細かいところまでハッキリと点群取得ができているのか、配管をズームして確認してみましょう。

ズームすると、完璧な円柱形状ではなく少し周りがモヤっとした状態になっています。
若干の見づらさはありますが、配管だと認識できないほどではありません。
また、これは50Aの配管ですが、次の100Aの配管はより綺麗な円柱に見えます。

対象が大きいものの場合はノイズによる不便さも少ないかと思います。

ノイズはClassNK-PEERLESS内でも除去することができます。
その結果がこちらです。若干ですが、配管の周りのモヤモヤが減り、輪郭がわかりやすくなりました。

TLSで取得した点群に比べると、若干の見づらさはありますが、
モデリングに支障が出るほどではないと判断しました。

ハンディスキャナー点群の課題:モデリング機能が認識しづらい?

一つ目の課題と通ずる課題として、モデリング機能が認識しづらいのではないか?という二つ目の課題があります。これは、前章で説明したハンディスキャナー特有の測定精度やSLAMの誤差、ノイズによって、形状が上手く取得できず、モデリングソフト側で認識しづらいのではないか、という内容です。

例えば、PEERLESSの配管自動認識機能では、点群データ上から円柱形状の分布をしている点群を見つけ出し、その形状に合う配管を自動作成しますが、点群が円柱形状と認識されない場合は作成できません。

いくつかの要素のモデリング機能で確認してみましょう。

<配管>

PEERLESSの特徴である、点群を塗って作成する配管認識機能を使います。

TLSで取得した点群での配管モデル作成はこちらをご覧ください。

配管径が誤って認識されることが数回ありましたが、基本的にすべて配管として認識しスムーズにモデリングできています。長い配管は継手も含め追従して作成されている箇所もあるので、配管の点群データがしっかりと取得できていることがわかります。
一部、径や長さの修正が必要になるので、TLSの点群と同じような快適さでのモデリングとはいきませんが、ハンディスキャナーの点群としては認識率が良いほうかと思います。

<平面>

平面は、本来厚みの無い状態で点群取得される箇所ですが、スキャナーによっては厚みが発生してしまい平面作成することが難しいケースがあります。
iPhone LiDAR機能で取得した、厚みのある点群で平面作成した例はこちら

床の平面を作成していきます。
平面も点群を塗ることで作成できます。

平面が厚みに引っ張られて大きく傾くこともなく、特に問題なくPEERLESSの平面作成機能が使えました。

<鋼材>

最後に、鋼材を作成します。
鋼材認識機能も、点群を塗って作成していきます。

鋼材の点群の断面を見ると、配管以上にモヤっとしていて形がわかりづらいですが、
点群を塗ると、ClassNK-PEERLESSがしっかりと鋼材の形状を認識していることがわかります。
架台も、壁際の鋼材も寸法の変更が必要な場合はありますが、形状認識に問題はありません。

ハンディスキャナー点群の課題:ぶっちゃけ精度は?

ここでいう精度は、現物と点群の精度、点群とモデルの精度の2種類あります。
前者に関しては、スキャナーの仕様通りで考えていただければ良いかと思います。
Lixel L2 Proでは、100m以内で2点間の測定精度は1cmとなっており、絶対水平精度及び絶対垂直精度に関してもGCPやRTKを利用した場合で3cmになり、屋内などの特徴点が多い環境ではさらに高精度になる傾向があるそうです。
※GCP : Ground Control Point, 地上に設置された、座標が正確にわかっている基準点
※RTK : Real Time Kinematic, 衛星測位システム (GNSS) の信号を用いて、高い精度で位置を測定する技術

よく言われるモデリング精度というのは、後者の点群とモデルの誤差量になります。
点群を正としたときに、点群通りにモデルが作成できるかという視点で見た時、
障害となるのは、点の厚み(粗さ)・ノイズ・位置合わせ精度です。

まずは、Lixel L2 Pro で取得した平面の点群を真横から見て厚みを確認してみましょう。
※下のルーラーの単位はmmです。

ほぼ1本線に見え、厚みはほとんどありません。
もっと拡大してみましょう。


少し線に揺らぎが出てきましたが、ここまで拡大しても厚みは目立ちません。

次に、ClassNK-PEERLESSで作成した平面モデルと点群との誤差をカラーマップで表示してみます。
こちらの誤差評価機能の詳細はこちらをご覧ください。
平面モデルに対して、+Z方向に20mm誤差がある(膨らんでいる)場合は赤、-Z方向に20mm誤差がある(凹んでいる)場合は青になります。

目視でも厚みがないことはわかりましたが、カラーマップを表示しても緑(±2mm以内) の上下に赤や青が表示されることがなく、点群と平面モデルとの誤差がほとんどないことがわかります。

上(Z方向)から、カラーマップ表示を見てみます。
こちらは、床面を一枚面で作成した場合の誤差結果です。
真ん中のあたりがほとんど誤差のない緑で、右下から左上にかけて少し傾いていることが色の傾向からわかります。これは恐らく、点群の厚みによる誤差ではなく現物の床の高さの違いが検出されていると考えられます。

次に、画像のように赤線部分で2面に分けて平面作成した場合の誤差結果です。


全体的に緑の部分が増えました。局所的に膨らんでいる箇所や凹んでいる箇所が検出しやすくなりました。

点の厚みやノイズに引っ張られて、モデリング精度が下がることも基本的にはなさそうです。また、位置合わせの際のずれに関しても、モデリングしていて気になるようなずれはありませんでした。
よって、モデリング精度にも問題がないかと思います。
本章のはじめに記載したスキャナー精度(現物と点群との誤差)が、要求精度内であれば充分ご活用いただけるデータです。

まとめ(モデリング担当者所感)

最後に、モデリング担当者(入社3年目、ClassNK-PEERLESS操作歴2年の営業メンバー)の所感です。今回の検証の中でも最も感覚的なものになりますので、参考程度にご覧ください。

  • 全体的に点群の死角が少なくよく撮れていたので、現場の様子をイメージしやすかったです。
  • 鋼材の数が多かったですが、コピーを活用したため早めに作成できました。一発で規格が一致しないことが多かったですが、「高さは合っているが幅は合っている」というようなニアピンが多かったので、規格の修正が大きな手間にならず作業できました。
  • 床・壁・天井といった平面部は、厚みや凹凸もほぼなく、比較的綺麗に撮れていると感じました。平面部はTLSの点群と比較しても遜色ないと思います。
  • 物体のエッジが、比較的シャープに撮れていると感じました。
  • SLAM式測定機の場合、鋼材や配管が波打ったり、歪んだり、現況通りに測定できていない場合もあると経験上思っていますが、それがほぼないように見えました。
  • 径の大きい配管の作成時、規格の認識の精度は高かったですが、配管の自動延長については意外とあまり伸びてくれないケースが多かったです。マニュアルで作成する分には問題ないかと思います。
  • 細い配管や機器が細々としている箇所は、ノイズに埋もれてしまい、形状が確認しづらいことが多かったです。

今回の検証内容や担当者所感を踏まえると、点群モデリングを考えているお客様の中で、次のいずれかに当てはまるシチュエーションの場合にXGRIDSのスキャナーが適していると判断しました。

  • 平面的な部分の多い躯体を中心にモデル化を行いたい
  • シビアな精度や粒度は求めずに簡易的にモデル化を行いたい
  • モデリング対象に小径管やボルト等細かな部材は含まれない
  • モデリング作業は多少マニアックになっても良いので、スキャナー計測作業を簡単にしたい(or 費用を抑えたい)
  • 点群を見ることにある程度慣れている(多少のノイズは気にしない)

tag : モデリング レーザースキャナ データ連携 誤差評価