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活用例

もっと活用!LiDARスキャナ 第1回【LiDARとは?】

3Dスキャナーアプリ『Sakura3D SCAN』の開発・販売により、もっとLiDARスキャナの活用法をご提案し、お客様の課題解決に役立てられないかと考え、この度LiDARに関するアレコレを記事にまとめてみました。

まずは、そもそもLiDARとは何か?簡単にご説明いたします。

そもそもLiDAR(ライダー)とは?

LiDAR(ライダー) とは、物体にレーザ光を照射し、その反射光が戻ってきた時間や波長から物体の形状や距離を測定するリモートセンシング(触らずに調べる)技術の一つです。
LiDARの語源は、「Light Detection and Ranging」や、「Laser Imaging Detection and Ranging」の頭文字をとったものです。この技術は新しい技術ではなく1960年代には利用され、地形調査等、測量分野を中心に活用されてきました。最近になり、幅広い範囲で研究開発・利用が進んできており、測量分野での活用だけでなく、身近な製品へも取り入れられています。

LiDARの仕組み

仕組み自体は非常にシンプルです。レーザー光を物体に照射し、物体に当たって跳ね返ってくるまでの時間により、物体までの距離や方向を測定しています。
レーダー(電波)と同じ原理ですが、レーダーに比べてレーザー光の光束密度が高く、波長が短いという特徴があるため、高精度に物体の形状を測定できるメリットがあります。

「レーザー光の光束密度が高くて波長が短いと、測定精度が良いってどういうこと?」

光束とは、光源から出ている光の量になります。今回の場合では、レーザーの量をいいます。光束密度とは、単位立体角あたりの光束のこと。LiDARには、波長の短い赤外レーザー光を用いますので、距離分解能が高い※=精度が高い、ということになります。

※距離分解能とはレーザーの方向に位置する2つの対象物からの反射するレーザー光を2点と識別出来る最小距離のことです。
距離分解能(△X)= nλ/2 で表わされます。(n=波数、λ=波長)

LiDARの開発状況

現在、世界中の企業がLiDARを開発しています。一般的にLiDARの方式は、機械スキャン方式、ソリッドステート方式、MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)スキャン方式があるといわれ、各企業は、次項に記載される大きな市場(分野)への期待から、これらのいずれかの方式、または複数の方式のLiDARを開発・販売しています。

どんな分野への応用が可能なの?

空間計測

航空レーザー測量

航空レーザー測量では、航空機かヘリコプター、UAV(ドローン) にLiDARシステムを搭載します。
GNSS測量機、IMU(慣性計測装置)を使い、正確な位置情報を把握しながら、距離データを解析することで地表面の座標値を計測していきます。この測定データから地形を抽出し、利用されています。
また利用されるLiDARシステムには、標高と水深を同時に収集するタイプもあります。海岸線、港湾、河川などではこのシステムを活用して、水底の地形を抽出することも行われています。

LiDARシステム、GNSS測量機、IMUのトリプルコンボで測量!
「なぜ航空レーザー測量では、
レーザー光の反射でわかる距離の測定の他に、航空機の位置や姿勢、加速度を把握する必要があるの?」


LiDARシステムは航空機に搭載しています。航空機の下にLiDARが付いていても、機体の傾きにより常に真下にレーザーが飛ぶわけではありません。この状況で正確に測量するためには、航空機の位置や姿勢(傾き)、加速度を知る必要があります。
GNSS測定器は航空機の位置を把握、IMUは航空機の姿勢や加速度を把握します。
このように航空機の正確な位置、姿勢を把握した上で、レーザー光で測った座標値を補正します。

地上レーザー測量

地上レーザー測量には、地上に設置して測量するタイプ(固定型) と自動車等の移動体に設置して測量するタイプ(車載型) があります。

 固定型車載型
設置場所測定場所の地上
EX: 施設の内側、外側
移動体
EX: 自動車、列車、船舶
測定対象

固定型レーザー測量は、LiDARシステムをその場所に固定させて測定する手法です。多くのケースでは、施設の外側・内側に設置して、高精度かつ高密度の測定点群を収集します。この高精度・高密度の点群を使用して、工場・プラント・造船といった大型施設やその中にある各種設備の改修・管理、道路や鉄道といったインフラの検査、都市モデルの作成などに利用されています。

車載型レーザー測量では、移動体に搭載したLiDARシステムから測定点群を収集します。搭載できる移動体には、自動車以外に列車や船舶(ボート) です。測定データから、道路などの施設である道路標識や街灯、架線等を認識して利用します。

自動運転

LiDARの認識技術が研究されている分野として、自動車の自動運転分野があります。自動運転では絶え間なく変換する周辺環境を把握する必要があります。そのためLiDARの認識技術は、人間の眼の代わりとしての役割を期待されています。
・現在の道路状況
・車間距離の把握
・歩行者や自動車等の障害物の把握
など、刻々と変化する多くの情報を漏れなく且つ高速に処理する必要があります。

自動運転は、明確なレベル分けが定義付けされています。

現在は自動運転レベルが3以上であれば、自動運転車といえます。
それには上記の周辺環境の把握が不可欠です。実現するためには、LiDAR技術と各種認識技術を融合した利用が有効なのではないかと考えられています。

公益社団法人 自動車技術会
『JASO テクニカルペーパ 自動車用運転自動化システムのレベル分類及び定義』

「表1-運転自動化レベルの概要」より一部抜粋して掲載

レベル0 運転自動化なし

運転者が全ての動的運転タスクを実行。

レベル1 運転支援

運転自動化システムが動的運転タスクの縦方向又は横方向のいずれかの車両運動制御のサブタスクを特定の限定領域において持続的に実行。

レベル2 部分運転自動化

運転自動化システムが動的運転タスクの縦方向及び横方向両方の車両運動制御のサブタスクを特定の限定領域において持続的に実行。

レベル3 条件付運転自動化

運転自動化システムが全ての動的運転タスクを限定領域において持続的に実行。
利用者は、作動継続が困難な場合への適切な応答準備ができていることが期待される。

レベル4 高度運転自動化

運転自動化システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を限定領域において持続的に実行。作動継続が困難な場合、利用者が介入の要求に応答することは期待されない。

レベル5 完全運転自動化

運転自動化システムが全ての動的運転タスク及び作動継続が困難な場合への応答を持続的かつ無制限に実行。作動継続が困難な場合、利用者が介入の要求に応答することは期待されない。

スマートフォンへの採用

最も私達に身近なLiDAR技術といえば、スマホカメラでの利用ではないでしょうか。

2020年10月14日のApple社のイベントで、iPhone 12 Pro と iPhone 12 Pro Maxに「LiDARスキャナ」が搭載されました。
LiDARが搭載されたことにより、AR(Augmented Reality: 拡張現実)での利用が期待されています。ARの課題に、現実の物体に重ね合わせて表示させる映像の前後関係が、手前に表示されたり後ろに隠れたりする、オクルージョン問題があります。この課題は、LiDARの活用によって周辺の位置情報を素早く測定できることから、解決できることがわかっています。
またiPhoneに搭載されたLiDARとApple社から開発者向けに提供されているARフレームワーク「ARKit」を使うことで、iPhone/iPadを使ったARアプリの開発も容易にできるようになりました。このARKitを使えば、LiDARで測定された点群の取得も可能で、様々な分野での活用が期待されています。

スマホの基本的な機能である写真の分野でも、LiDARの暗所に強いという特徴(レーザー光を使用するため)を生かし、オートフォーカス速度が向上したという記事が掲載されています。

iPhone 12 ProやiPad Proなどのスマホが採用したことで、身近なところでの利用も可能になったLiDAR。自動運転が大きなビジネスとして期待されていますが、一般人の間でも活用されつつある技術となっています。気軽にトライできるこの技術をご自身で使ってみたいと思いませんか?
次の記事では、スマホのLiDARスキャナアプリを使ってなるべく精度よく、”使える”点群を測定するコツをご紹介します。

投稿日:2021年9月1日
更新日:2022年2月8日

tag : LiDAR Sakura3D SCAN